上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
SS


ちょいと、百合根P、ガルシアPと意気投合し、SSを作る事に。
大正頃の山間の町、偶像町にてのちょっとした、そして少し不思議なお話達。
その世界の一部に噛ませて頂きました。
特に律子の屋敷は陽一Pが考えた物を更に発展させました!!(良い方にと思っております。

今回はSS。将来的には動画になるかも?

追伸:りっちゃんがデーモンを滅ぼすようです は鋭意製作中です。
==================================================


ふと・・・、空を見上げる時がある。
空ってこんなに透明なものだったのかなって思って。
朝、東から赤くなっていくかと思うと青になり、夕には青から赤に変わって、黒となる。
いや、ちがう。深い藍色だ。
カラン、コロンと下駄の音を鳴らしながら、提灯を片手に家路を急ぐ。
そんな事を頭に過ぎらせながら、家路を急ぐ。
僕・・・いや、小生の名は秋月涼。
偶像町という町にある小さな郵便局に勤めている。
元は、都会の郵便局に勤めていたのだけれど、お恥ずかしい諸事情により、この偶像町への転勤を願い出て、今に至る。
その諸事情の一つが・・・。
「おかえり。涼、遅かったじゃない。ご飯よろしくね。」
秋月律子。この従姉が僕・・・小生の!『お恥ずかしい諸事情』の八割を占める。
「はいはい。今日はネェさんの家から干物が送られてきたからそれを焼くよ。漬け物は萩原さんちで貰ってきた奴・・・好きだったよね?」
提灯の火を吹き消し、玄関の脇に立てかける。今日もありがとうと御礼はかかさない。
「あのぬか漬けは絶品よねぇ。適度な水分を保ちながら、塩辛いと感じさせない漬かり具合。で、干物はなによ?」
今日も、物書きに耽っていたらしく、文机に向きながら宙に描く様に筆を踊らせる。傍目から見ても、胡瓜や茄子を描いているのが分かる。
「・・・鯵だね。外で七輪で焼くから、何かあったら声かけてね。」
はいはいと僕の言葉に返事を返す。月の終わりが近づくといつもこんな感じになる。
小説家。物語りを文として創りだす仕事。従姉の親は眉を潜めていたが、僕にとって従姉は・・・誇らしい気持ちとちょっとした嫉妬を綯交ぜにした・・・そう、子供が持つ『憧れ』の様な気持ちを抱いている。
僕は、そんな従姉が買ったちょっと古臭い家・・・いや、屋敷と言えようか? そこに一緒に住まわせて貰っている。
家賃はない。・・・というよりも、掃除、洗濯、食事などの雑用を代わりにすることが家賃と言えるかも知れない。
郵便局員としての仕事をし、帰ってきたら食事などの雑用。カレンダーでの休みの日に掃除、洗濯を纏めてこなす様な感じだ。
はっきり言って、ここに来る前よりも忙しいかも知れない。

・・・でも・・・

充実を感じている自分がいることも事実だった。


台所から七輪を持ち出す。中に炭を入れ、上に金網を載せた。
新聞紙を丸め、マッチで火種にする。そして、七輪の中に入れる。
その間に、米を研ぎ、釜に水と一緒に入れる。鉄鍋に様々な山菜を入れ、水を張る。
準備は万端。
七輪の様子を見ると、いい具合に炭が赤くなっていた。
それを火箸で摘み、いくつか釜と鍋の竈に入れる。
実際の所、鯵の干物を焼くのは最後の方だ。
何本か薪をくべて、様子をみる。
その間に、萩原さんから貰ったぬか漬けを切る。
切ったぬか漬けは、小皿と中皿に取り分けた。中皿は囲炉裏のわきに置き、小皿は従姉の書斎まで持っていく。
食事が出来るまでの摘みである。ありがとと、こちらに顔を向けずに口にする。胡瓜を口にする小気味良い音が響く。
その音が、なんだかこっちまで心地良くなる。
こんな事は以前は考えもつかなかったな。
そう思った時、ふと、従姉が何故自分を無理矢理に転勤させたのか・・・ちょっと分かった気がした。
くすりと笑みを浮かべたりしながら、台所へ向かって歩いていると、視界の隅を金色が過ぎった。
もう一人分多く作らないとなと思いながら台所に着くと、金色の髪をした少女が丸くなっていた。
竈の火もあって、他の部屋よりも暖かいのと、米の炊ける少し重い香りが彼女に取って心地良いのかも知れない。
そろそろ、良い具合なはずだ。釜の蓋を取る。
白く良い香りのする煙が立ち上った後、白いご飯が見える。こちらはよし。
汁物の方も良く煮こめている。味噌を取り出し、少しずつ溶いていく。
そして、味見。・・・うん、丁度良い。
両方の竈の中から炭と薪を器にいれて、囲炉裏の中に整えつつ置いていく。
鍋を布巾を介して持ち、囲炉裏の上に吊るす。
米はそのままに、鯵を焼き始める。炭火によって、ジワジワと熱が通って行くのがわかる。
そして、脂が炭にたれると香ばしい得も言えない匂いが漂う。すると、後ろで何か音がする。
と、思ったら、肩に少女が頭を置いていた。
鯵の焼ける匂いに堪らず起きてきたらしい。その目は、ジーッと鯵だけを見つめている。
「美希ちゃん、もうちょっと待ってね。おにぎりも用意するから。」
僕の言葉に、少女・・・美希はうん!と言った後、猫が好意を寄せるように頬擦りをしてくる。
何度かやめるように言ったんだけど、一向にやめてくれない。
まぁ・・・悪い気はしないけどね。
焼き上がった鯵を、三つの皿に乗せて囲炉裏の側へ持っていく。
その後、釜の中のご飯をお櫃に移し、同じく囲炉裏の側へ持っていった。
それに合わせたのか分からないけれど、丁度、従姉も来る。本当に、こういう所は不思議だ。


「しかし、ホント、その猫、涼に懐いてるわね。」
従姉が鯵を咀嚼しながら箸で差した。僕の隣でガツガツと鯵とおにぎりを食べている『三毛猫』を。
「そうだね。まぁ、ご飯も上げてるからじゃないかな?」
と、萩原さんちの茄子を箸でつまみながら、空いた片方の手で『美希』の頭を撫でてあげる。
頭を撫でられるのが好きなのか、また頬擦りをする。
その仕草に笑みを零した後、従姉は食事を続けた。
「所でさ・・・。なんで、僕を呼んだの? 理由が知りたいな。」
僕は前から思っていたことを口にしてみた。もしかして、僕の事を・・・。
「ああ、簡単よ。あんた、昔から色々と見えてたでしょ? この町には何かあるから、その『見える』って事が私のインスピレーションに繋がるんじゃないかなと思っただけよ。」
そうだろうと思った。この従姉は昔からこんな感じで、会えば噂話や言い伝えを元に引きずり回された。やっぱりか・・・と心の何処かで思った瞬間・・・。
「なんてね。あんたが仕事をしてるところを見て、無理してるって思ったから無理言ってこっちへ連れてきたのよ。」
カラカラと笑い声を上げた。そして、笑みを浮かべながらジーッと見つめてくる。そう、全てお見通しだとでも言うかのように。
そして、少しずつ話してくれた。僕の両親が僕をべた褒めしていたこと。そして、僕がそれに応える様に過ごしていた日々、能面を被ったような笑顔を浮かべていた事を。ふと、『美希』が大丈夫?と口にした。こちらに顔を向け、真摯な顔をしている。どうやら、従姉の言葉に撫でる事も忘れていた様だ。
大丈夫。僕は『美希』に向かって、笑顔で言った。そして、改めて頭を撫でてあげる。それに安心したのか、また頬擦りをして、丸くなった。
「その猫・・・『美希』だっけ? 『美希』にまで心配されるようじゃ、ダメね。」
『美希』が凄い勢いで反応した。初めて、従姉から名前を呼ばれたのだ。満面の笑顔で、やっと名前を呼んでくれたの!と言いながら、従姉に頬擦りをする。
その仕草に満更でもないようで、従姉は、『美希』の頭を撫でてあげた。
「もう、この子は・・・。でも、今は大丈夫みたいね。あんたが仕事してるのを見る限り・・・もう、大丈夫ね。」
と、箸でまた漬け物を口にする。その間も、『美希』の背を撫でてあげている。その手で安心しているのか、『美希』は丸くなって、眠った様だ。ちらっと、『美希』を見る従姉の眼差しが優しげで、少しは報われたんじゃないかなと思った。『美希』の声は届いていなくとも。
僕は、この町に誘ってくれた律子ネェちゃんに、改めて感謝した。



空が深い藍色から赤くなり、そして青となった。
また、一日が始まる。
朝食を作って、家を出る。
カランコロンと下駄を鳴らしつつ、帰りに使う提灯を片手に持って。
僕の勤める郵便局は、町の入口にある。だから、町の人達とは必ずと言って良いほど会う。
おはようございます。今日も元気ですね。後で郵便があったら持って行きますから。会う人達と笑顔で挨拶を交わす。
相手も、今日も元気だね。お茶用意しとくからね。また話し相手になっておくれよ。等と言葉を交わす。
そして、郵便局に着いたら、自分の制服に着替える。手違いがあったのかちょっとサイズの大きい制服だ。
ズボンが落ちないようにベルトと、ベルト吊りを欠かさない。
そうこうすると、今日の分の郵便が届けられる。
僕か従姉宛の郵便は、僕が持って帰るから避けておく。新聞を届けるのも僕の仕事だ。
帝都に居たときは、新聞社の人が毎朝配っていたのを覚えている。・・・まるで、生き急いでいるような。上手くは言えないけれど、そんな感じ・・・だと思う。
でも、この町はちょっと違った。仕事も、町の各家に郵便を届け、帰る前に唯一のポストから郵便物を回収してくる・・・。それだけ。
局長が言うには「届け先の方と親睦を深めるのも、郵便局員としての仕事だ。」(目深に帽子を被り、局長用の机に足を投げ出して、銜え煙草をしながらでなければ、尊敬できるのに!!)との事で、僕は毎日自転車に乗って届けて回っているだけなんだけど・・・終わる頃には日が落ち始めるぐらいだ。
・・・そういう風に、比べたら前よりも激務になってるはずなんだけど・・・僕は凄く充実している。
なにより、この町の人達を好きになっていた。従姉がここに居を構えた気持ちがわかる。(ただ、あの屋敷は絶対に築25年じゃすまない。100年くらい絶対にたってる!)そして、『美希』や、他の人のように・・・この町はちょっと変わった所がある。昔からちょっと嫌に思っていた『見える』という事を、嬉しく思えてくる。
だから、僕はポストマンの証でもある赤い自転車をこぐ。
そして、笑顔でこう言う。

「郵便届けにきました!」


スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://niitenzero.blog64.fc2.com/tb.php/89-a09f0cfb
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。