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SS
アイマス1時間SSにタイムシフトで参加しました。
まぁこれはifの話的な扱いでよろしくお願いします。

ご覧になる方は、追記からどうぞ!
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風を斬る音がする。そう、刃が風を斬る音だ。
ヒュン ヒュン となる度に、周りを囲む竹林の竹が音を立てて倒れ行く。
その中心には、上半身を露にした男がいた。その肉体には無駄な肉など無く、鍛えられた筋肉には珠のような汗が浮かんでいた。
その手には刀を持ち、油断無く構えている。長年、研鑽してきたのだろう。その構えには無駄な動き、隙など見出せない。
一息、空気を吸う。そして、その空気を吐くと共に刀を振り降ろす。
その一閃は太い竹を物ともせず、まるで擦り抜けるかの様に抜けた。
目を閉じ、切先を振るい鞘に納める。チャキンという納刀の音と共に、竹が斜めにズレていき、倒れた。
そして、その竹が倒れた後には、欠けのない丸い月が優しい光を投げ掛けていた。
「…今宵も性が出ますね。土方局長?」
そう、男の背後から声がかかる。男は上着に手を通し、最小限の動きで着込んだ。そして、一緒に置いてあった制帽を被り、振り向いた。
そして、その声の持ち主である銀色の髪を持つ少女に礼儀正しく礼をする。
「此度も、裏庭をお貸し頂きありがたく。四条の姫。」
「お口がお上手な事で」
四条の姫はコロコロと笑う。その笑顔は普通の男ならコロリと傾倒してしまうだろう。『傾城』『妖艶』という言葉がよく似合う。
この月明かりのせいかも知れない。しかし、それは彼女の美貌を際立たせるだけだった。
「姫君に対して当然です。」
彼は、本心からそう言っていた。自分の姿を借りた相手ならば、彼女を口説いていただろう。なにせ、貰った恋文の数を酒の肴にする程の男だった。だが、自分は違う。
「貴方の持ち主を想っていらっしゃるのですか?」
四条の姫の問いに、男は沈黙を返した。それだけで答えは分かる。
「時は流れるものです。貴方にも、私にも……勿論、この町にも」
風が吹き抜ける。一陣の風が四条の姫の髪を靡かせる。彼女は自分の髪に手を当てながら続けた。
「今、貴方は守る者達を得た。生きる目的を得た。それで宜しいのではないですか?」
彼女の言葉を受けて、彼はくっくっくと笑みを零した。そして、笑い声を上げる。その笑い声は、快活として竹林に響いた。ああ、そうだ。あの人自体が過去をよりも、今を。そして、未来を見ていた人だった。
「貴方には…敵いませんな。」
彼は肩を竦めながら両の手を上げた。その顔には何か、吹っ切れた笑みが浮かんでいた。
その笑みを見て、彼女も笑顔を浮かべた。だが、すぐに驚きの表情に変わる。視線は彼の後ろに向かっている。
彼は、その視線を追うように視線を動かした。

そこには、自己の存在を主張するかの様に、筍が顔を見せていた。彼女の視線はそれに釘付けの様だ。


「では、少し筍を採って行きましょうか。」
「よ、よろしいのですか?!」
彼の言葉に、彼女は驚きの声を上げるが……その中には喜びの声が混ざっていた。
彼女の、少女らしい仕草に男はつい、笑みを漏らす。ああ、こういう仕草もするのだな。彼はそう思っていた。
「ええ。いつも裏庭を貸して頂いている御礼です。それに、あずさ殿もお喜びになるでしょう。」
その言葉に、更に笑顔を零した。

彼が筍に近づいて、手を伸ばした瞬間。

一陣の風が吹いた。

その風には、春の香りがのっていた。

そして、筍の香り…。

春の兆しであった。
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